続こんぶの日記 KOMBU's diary from Sydney

私の頭のなかの自転車

2009年4月23日(木)

あたりをぶらぶらとしていて、病院の掲示板に目をやると、いろいろなものが目に入って来た。“家族が乳がんになったら−地域でのサポートを考える”など。また“前立腺がんサポートグループ”というのもあった。これらは、日本と同様オーストラリアで主要ながんなのだろう。また、“痴ほう老人患者家族の会”などの掲示板もあった。加えて、“病院職員労働組合、経済低迷による雇用者削減に反対!労働者と家族を守れ!”といったポスターも目につく。世界不況の風が病院まで流れているかと思うと、何とも肌寒い。

お昼になると、彼が食事を持ってやってきてくれた。あらかじめお願いしておいた、シドニーにある日本人経営のパン屋さんのパンだ。ここの卵サンドウィッチは、日本のものと同じ味がするので大好きだ。私と彼は、病院のカフェでお茶を飲みながら、ここのパンをほおばった。

病院の外に出ると、すっかり雨もやみ、秋のやわらかな日が射していた。私たちは、病院の外の空気を吸おうとゆっくりと散歩することにした。病院の前に芝生のグラウンドがあり、そこで鳥たちが遊んでいた。前回入院していた東京の大学病院は、高層ビル群の中にあり鳥たちの姿をみることはなかったなあと改めて思う。今はその東京のビル群さえも恋しいけれど、いつかここシドニーが自分の居場所だと、故郷だと思える日がくるのだろうか。

なんだかセンチになりながら、外来の私のベッドに戻った。白人のナースが、待っていましたとばかりに、「どこほっつき歩いていたの?マスクもしないで。免疫力が下がっていることが知っているでしょ?もうすぐ病棟に案内できるから待っていてね。」とぴしゃりと言った。

前回の入院時も、勝手にシャワーをあびて「頭蓋内出血でもしたらどうするの?」と医師に怒られたことを思い出した。私はベッドに横になりながらなんだかやりきれない思いになった。また元気になれるだろうか?もし寝ている間に脳の血管が切れて、びしゃびしゃ出血してしまったらどうしよう?でももう少しは切れているだろう、だから最近もの覚えも悪くて...私の頭の中の自転車がこぎだし、ぼろぼろと涙がこぼれてきた。

泣いている私に彼が気がつき、「どうしたの?看護師の言うことは気にしないで少し眠ったらいいよ。」と言ってくれた。脳内出血が心配だ、と彼に打ち明けると、彼は「脳が出血する前に、歯茎が出血するでしょ。歯茎からは出血していないし、昨夜にステロイドを飲んだから大丈夫だよ。頭の中の自転車を止めな。」と笑顔で答えてくれた。彼は、私の頭の中の自転車が一度動き出すと、なかなかとまらないことを知っているのだ。

私はその言葉を聞いて安心し、少し眠ろうと思った。眠る前に、前回新宿の病院のベッドの中でもしたように、両手両足、指がきちんと動くことと、その感触を確かめた。



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by gonzalesK | 2009-05-08 14:32 | ITP in Sydney

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