続こんぶの日記 KOMBU's diary from Sydney

カテゴリ:Midwifery- 助産( 10 )




The Year of Rooster- 初心忘れべからづ

2017年2月10日(木)


ブログで新年の挨拶もせずまま、旧正月が過ぎ、Happy Valentine's day の時期になってしまった。


今年のシドニーの夏は、日本の夏、キンチョーの夏を思い出させる猛暑だ。炎天下の公園で遊びたがる子どもを、何とか誤摩化しながら涼しいショッピングセンターに連れて行ったりしているうちに、あっという間に時が経ってしまった。


加えてシドニーは、アパートなどの建築ラッシュに伴って、プチベビーブームが起こっているのか?私が働く公立病院の妊婦検診も分娩室も、産後の入院棟もいつでも大忙しだ。


分娩室に勤務していたある日、チームリーダーからひとつの任務を言い渡された。それは、「重症のpre-eclampsia (妊娠性高血圧腎症)で ICUに入院している産後間もない、お母さんのもとに、NICUのNursery (新生児室)に滞在している赤ちゃんを連れて、お母さんの子宮復古の状態も観察して、授乳を支援すること」であった。


私たちの公立病院の産後入院棟は、赤ちゃんとの24時間母子同室 - rooming in- が基本で、新生児室は存在しない。なので、お母さんの高血圧や出血が重症で、ICUへの入院が必要とされる場合は、赤ちゃんはNICUのNursery に送られて、NICUのスタッフに面倒をみてもらうことになる。


私は、分別室の隣に位置するNICUに向かい、まず赤ちゃんをピックアップした。赤ちゃんは、ミルクを飲んだ直後でよく寝ていた。私は、「これからお母さんに乳をもらいに行くのにこんなに寝ちゃっているよ、、、。」と寝息が聞こえそうなくらいにすやすや寝ていている赤ちゃんを見て、そう思った。


お母さんが入院しているICUは、別の棟にあるので、長い廊下を渡り、エレベーターを乗り換えなければならない。赤ちゃんは、コットを押されて気持ちがいいのか、ますます深い眠りに入っているように見えたのは、気のせいか。


コットで寝ている生後数日の赤ちゃんと一緒にエレベーターを待っていると、周囲の視線が、赤ちゃんに釘付けになっているのに気がついた。受付の制服を着たおばちゃんは、-This is the most beautiful person I've ever seen today!!- と感嘆していた。また、通りすがりの人たちも、-Look that baby, so beautiful - などと呟いていく。エレベーターが到着したら、みんなでドアが急に閉まらないように、手で押さえてくれたりもした。エレベーターに乗っていた強面の片腕入れ墨の病院設備のおじさんも、赤ちゃんを見て、微笑んでいた。


ようやくICUに到着すると、受付のお姉さんは、赤ちゃんのことを「この子は、ゴージャスねえ」と言いながら、お母さんのベットまで丁寧に案内してくれた。ICUのドクターや、ナースは、赤ちゃんのまわりに集まって、かわいいだとか、ビューティフルなソーセージ (オーストラリア人は、赤ちゃんや幼児をソーセージと呼んだりする)、などと言っていた。私の赤ちゃんではないのに、私も何だか悪い気はしないぞ、と思ってしまった。


この小旅行で、赤ちゃんは、弱い小さな存在だけれど、水戸黄門のように強い、と改めて思った。大昔の日本でも、通行手形なしに関所を通れたのは、殿様と産婆さんだけだったというのを聞いたことがある。私たち助産師は、赤ちゃんが身近な存在なので、いちいち感嘆の声をあげたりはしない。でも私も初心に戻って、新生児の美しさに常に感動していたいと思った。


夫にこの出来事を話したら、-そうだよね、We take it for granted- 赤ちゃんがかわいいとか当たり前だと思っちゃうから、ありがたみが薄れちゃうよね、と共感してくれた。




今年もよろしくお願いいたします。

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by gonzalesK | 2017-02-09 21:21 | Midwifery- 助産 | Comments(0)

オーストラリアで助産師になる!

2016年3月14日(月)


新年の挨拶も、Chinese Lunar New Year のご挨拶もせずに、あっという間に3月になってしまいました。過ぎた時間はどこへ行ってしまったのでしょうか?

先日、日本で助産師になるか、オーストラリアで助産師になるか、どちらがいいか迷っている、という方からご相談のメールを受けました。返信を一部抜粋します。オーストラリアの助産への理解の一助になればと思います。

以下抜粋です - - - -

--ご丁寧なメールをどうもありがとうございました。

メールを拝読しまして、Aさんは、貴重で豊かな経験をされていると存じました。
なので、日本で、または日本以外の国どちらで助産師になられても、いろいろな可能性が広がって来ると思いました。世界は助産師を必要としていますから、ぜひがんばって下さい!
  
率直に言うと、将来的に日本で仕事をするのであれば、日本で助産師になられるのもいいかと思います。私の、日本では医療者ではない友人たちが、ひとりはイギリスで助産師に、もう一人はオーストラリアで看護師/助産師になりました。2人とも、「恐らく日本での免許書き換えが難しいだろう」と嘆いております。このプロセスは、私にもわかりません。このあたりは、大学のB先生に伺ってみてもいいかもしれません。

一方で、その壁をいつか乗り越えられると信じて、オーストラリアで助産師になる、というのもありだと思います。日本では学ぶ機会の少ないcultural safety care-や医療英語を徹底的に学べば、病院勤務やJICAのみならず、国際赤十字や国連でも働けるチャンスがでてくるかもしれません。 

一部省略、そして以下再び抜粋

Q:オーストラリアのBachelor of Midwifery(助産学部) は医療の道を知らない身でもついていけますか?

私の通った大学(仮にABC大学)の bachelor of midwifery は、direct entryですので、 基本的にAさんのように、「看護師にはなりたくないけど、助産師になりたい」という生徒が学びます。1学年に40人くらいしか取らないために、人気と倍率も高いです。また、生徒の半分くらいは、Aさんのような社会人経験があるmature students ですので、学びやすい環境でした(オーストラリアは、いったん社会経験をして大学に行きなおす人が多いです)。

私は、ABC大学でナースではない同級生たちが立派に助産師になっていくのを見ています。彼女たちは、Nurse ではないため、助産師魂が強いようにも思います。なので、Aさんも問題ないと思います。私は個人的には、日本が産婆さんの時代のように、Nursing とMidwfeiry を切り離し、助産課程のdirect entry を作る時期なのではないかな、と思っています。

ただ、ABC大学のサイトを見直していて気がついたのですが、midwifery のコースは、international students を受け入れてないと明記しています。この理由は、私にもわかりません(私は永住権があり、local students として入学できました)。オーストラリアは交渉してなんぼの国ですので、問い合わせてみてもいいかもしれません。
 

Q:シドニーで助産師として勤務されていて、日本と大きく違うところはどんなところでしょうか?


ご周知の通り、日本とオーストラリアの間には、言葉や文化の違いがあります。一方で、どの助産師も、基本的には妊娠出産という同じ現象を扱います。なので、woman' s centred care や tender loving care など、原則は不思議と変わらないと実感しています。日本でもシドニーでも、経験豊かな助産師は、すばらしいケアをします。

オーストラリアでは、evidenced based medicine が当たり前なので、日本よりもガイドラインなどを州単位で作り、合理的にさくっとケアをするというところが進んでいるかもしれません。しかし、このあたりは両者のヘルスケアシステムから違うので、比較が難しいですね。一方で、日本の助産所などで働く助産師さんたちの経験値や技は、世界でもトップレベルだと思います。

蛇足ですと、オーストラリアでは、労働者の権利が強いです。なので、paid annual leave や sick leave/ carer leave などが充実しているので、work-life balance がいい、というのはあると思います。

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以上のようにお答えしました。質問の奥が深く、原稿用紙何枚分でも返信が書けそうだと思ったのですが、思うところをざくっと書いてみました。

写真だけお正月のシドニー
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by gonzalesK | 2016-03-14 20:04 | Midwifery- 助産 | Comments(0)

ユニフォーム

2015年9月22日(火)

休日には、まとめて仕事着であるユニフォームにアイロンをかけるのが日課になった。

蒸気機関車のようにもくもくとするティファールのアイロンのスチームに目をやりながら、ぼーっとアイロンをかけるのは、至福の時でもある。オーストラリアは電圧が高いせいだろうか、アイロンも良く仕事をこなす気がする。

NSW州の公立病院のユニフォームのカラーは、ネイビーに統一されている。いわゆるスクラブというやつで、日本では手術のナースが着ているようなものだ。このネイビーカラーが、なかなか良い。そもそもナースや助産師は、肉体労働者の'ブルーカラー'でもある。病院の同僚は、助産師は何よりも、3リットルの尿を貯留できる強靭な膀胱が必要だ、と言って笑っていた。トイレにも行く時間がないくらい忙しい、ということの揶揄だ。

日本では、「白衣の天使」という表現が未だにまかり通る。そして、ナースのユニフォームは、ほとんど白や、いまひとつばっとしないピンク色などが一般的だ。しかし、助産師に白衣は似合わないと私はずっと思っていた。産科や助産は、`bloody business' - 血のビジネス- である。ガウンも羽織ることが出来ないような、進行の速いお産に立ち会い、羊水や血液が飛び散れば、白衣は血痕だらけとなる。血だらけの私は、一見して変な人になってしまうのだ。

その点、ネイビーカラーは、少しくらいの血痕は目立たない。ただ、こちらでは、出勤も帰るときも、そのままユニフォーム。日本のようにロッカールームで着替えたりしない。なので、帰りに電車やバスを乗らなければならないときは、なるべくユニフォームを血だらけにならないように、粗相をしないように気をつけている。

↓ちょっと違うけどこんなイメージです。


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by gonzalesK | 2015-09-22 21:28 | Midwifery- 助産 | Comments(0)

こだわりのある人 微生物学編

2012年12月9日(金)

11月の中旬に主にエッセイなど助産学系科目の課題を提出、薬理・微生物学入門のテストがおわって、夏休みに入った。「Time is up, pens down」という試験官のかけ声とともに試験がおわり、私は嬉しくてアフリカ人の同級生とジャンプした。ジャンプは、世界共通喜びの表現である。

微生物学の先生は、キューリ夫人を21世紀に生きるオーストラリア人にしたような感じの先生だった。学期の初めに先生が教壇に立ったときは、その迫力に生徒たちは、やや引き気味だった。

しかし、授業を重ねるごとに、先生の微生物への愛が生徒たちにも伝わってきた。クラスは主に講義だったけれども、講義から、生徒も含めたディスカッションに発展していくことが多々あった。こだわりのある人々が魅力的であるように、その人の情熱は、周囲の人々に拡散するものだと思った。

先生は、bacteria is amazing −バクテリアってすごいのよ−とよく言っていた。「あなたが飼っている犬をとても愛していて、その犬と子どもを作りたいと思ってもできないでしょーでもバクテリアはそれができるの。抗生剤のコースを処方どおりに飲みきらないと、身体のなかにまだバクテリアが残ってね、それが違う種類のバクテリアと交わって、新しいバクテリアを作りだすの、それが抗生物質の耐性菌となる場合があってね−。」という口調で授業をすすめていく。

Virus (ウイルス)は、生きてないから殺せない、だからウイルス性の病気の治療は難しい、ウイルスが原因のかぜに抗生剤を飲んでも意味がないということが分かるでしょーと。専門家の人は、なんと大ざっぱな話をして、という指摘をするかもしれないが、これは入門学。助産師になる学生が、消毒や滅菌の重要性、感染症や予防接種の基本的な知識を得ることが目的なのだ。なので、これくらい噛み砕いて話してもらって、やっと今まで漠然としていたことが、クリアになったような気がした。

特に、抗生物質の耐性菌は大きな問題となっている。MRSAの最後の砦と言われていたバンコマイシンも効かない、あらゆる抗生物質が効かないsuper bugs の存在が途上国、先進国問わず報告されているそうだ。第2次世界大戦で多くの負傷した兵士を救ったペニシリンを発見したフレミングは、耐性菌の存在を発見当初から警告していた。

大手の製薬会社は、新世代の抗生物質を開発したところで、すぐに耐性菌が出て来て「売れなくなる」ために、抗生物質の新薬の開発には消極的なのだそうだ。そんなものよりも、バイアグラなんかを売っていた方が、本社のあるシカゴに巨大ビルが建つほどもうかるのだとか。

予防接種については、超予防接種推進派の先生と、アンチ予防接種派の一部学生たちの熱い議論が、しばしば炸裂していた。南アジア出身の学生が、「先進国には、子どもに予防接種を受けさせないという選択肢もあるけれど、貧しくて医者にもかかれないようなコミュニティに住む母親たちに、その選択肢はないと思う。ひとり子どもが感染症にかかったら、あっという間に他の子どもたちにも感染して、死んでいくから。」という発言して、クラスは静まりかえってしまった。

小さい肉眼では見えないウイルスやバクテリアたちーしかし私たち人間にとって、昔も今もその存在はすごく大きい。



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by gonzalesK | 2012-12-09 00:23 | Midwifery- 助産

愚痴らない赤ちゃん

2012年10月5日(金)

シドニーは青い空のなか、強い太陽の日差しが降り注いでいて、すっかり夏日和の今日このごろ。町行く人は、タンクトップにビーチサンダルというさわやかな出で立ちでいる。

そんなさわやかな陽気と人々をよそに、私たち学生は、6週間の病院実習の真っ最中で、疲労困憊している。病院実習は、いわばFree labour(ただ働き)である。

日本の看護や助産の実習では、患者さんひとりを受け持って、その人のケアを考えたりしていたような気がするけど、今もそうなのだろうか。こちらでは、supervisor といわれる助産師とペアを組んで、その助産師が受け持つ患者さんのケアを、supervisorと提供していく。勤務によって、助産師が忙しければ、付属の私も忙しいし、助産師が暇なら、お約束のtea time が延々と続き、私も助産師とぼーっとできる。

日本の教育現場とは違って、こちらでは、on-the job のトレーニングが徹底しているような印象を受けている。それは、卒業イコール独り立ちであり、その時点でほとんどのケアを自信を持って自分でできます、というレベルに達していなければならないということである。

そんななか、癒しのNICU実習が1週間ほどあった。早産で産まれた未熟児の赤ちゃんたち、何もしゃべらないけれど、生きようというエネルギーに満ちていて、とてもかわいかったな。28週未満で産まれた赤ちゃんたちは、ほとんど宇宙人のようで神々しい。新生児医療が発達した今、多くの赤ちゃんたちの予後は良いようだ。

一方、新生児医療は、莫大なコストがかかるために、イギリスでは、28週未満で産まれた赤ちゃんには、積極的な蘇生をしないそうだ。しかし、オーストラリアは、23週以降に産まれた赤ちゃんには、両親の意向があれば、積極的な蘇生や治療をしていて、日本の状況と近いのかなと感じた。オーストラリアは、生殖医療技術の最先端を行っており、双子ちゃんや三つ子ちゃんのお産も増えているようだ。

自分たちでしゃべることが出来ないから、実は赤ちゃんに関わることというのは、あまり知られていない。なので、新生児医学はこれからも発展を続けて行く分野なのだろう。私の実習中も、赤ちゃんの痛みを計るアセスメントツールについて、などのスタッフの学習会があった。医療行為や様々な症状に伴う赤ちゃんが経験する深刻な痛みは、のちの心理的な発達に関わるという研究報告が何年も前に出されている。そのために、痛みを緩和するためにモルヒネをどうやって使って行くか、という方針なども出されている。

一緒に働いたイギリス出身のナースは、「赤ちゃんは、正直だからいいわよ。泣きはするけど、大人みたいにぐちを言わないじゃない!They are not whining like adults!」と言っていた。ナースに強く同意しながらも、今日も私は、女性たちの叫び声やら愚痴を伺いに、分娩室や産後入院棟で立ち往生しているのであった。


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by gonzalesK | 2012-10-05 16:08 | Midwifery- 助産

みかん

2012年5月6日(日)


すっかり寒くなって、日が突然短くなった。本格的な秋の深まりを感じるシドニーの果物やさんには、柿やみかんが並び始めた。愛媛や熊本のみかんと比べものにならないくらい風味のないここのみかんを、最近おいしいと感じ始めてしまった。我ながら、すごい生活適応力だと思う。

大学の2学年目が2月末からスタートしている。ちらほらと姿を消した同級生もいれば、パートタイムで勉強している学生が2年目の2学年目ということで、科目によっては新しい同級生を迎えたりしている。講義や課題はあいかわらずで、首が回らないままおたおたしていたら、あっという間に5月になってしまった。

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今期は、5週間の病院実習がある。去年から同じ病院で実習しているので、スタッフとも顔見知りになり、緊張感がだいぶほぐれてきた。一方で、学生ながらも妊婦さんや産婦さんに対するcomittment が深くなっていくので、ケアの難しさも改めて目の当たりにするようになってきた。


いろいろ助産師さんの話や、ここでの自分の経験をふまえると、日本人には感謝する気持ちを大切にする、という文化があるんだなということにあらためて気がついた。日本で妊婦さんや産婦さんにケアを提供するのは、「仕事」であったが、そのやりとりのなかで「ありがとう」の一言を頂くと、やりがいは輪をかけたものだ。勤務を終えて病院から駅まで歩く中で、疲れた肉体にむちをうって、明日もがんばろうと思えるものだった。

しかし、ここには、本当にいろいろな文化を持った人がいる。無愛想が美徳、というか、恐らく自分の感情を表現することをよしとしない文化で育った人や、他人のことを気にせず、思いっきり自分の感情を表現することを遠慮しない文化を持った人もいる。そういう方々と「コミュ二ケーションが難しいな」と感じる場に出会ったときに、「私のケアが何か悪かったかしら?」「やっぱり私の英語が下手すぎるのかなー。」と反省の気持ちに陥ることもある。しかし、それはただそういう人が存在するということで、私がなにやらの問題ではない、ということもざくざくと割り切って考えなければならない、ということにも最近気がついた。

夫は、10年以上シドニーで働き、いろいろな人のケアをしてきた。ある日夫は、「こんぶ、Nobody can please everyone! 世界中のみんなを喜ばせることは、世界中の誰ものができないことだよ。特にシドニーは、いろいろな人が住んでいるからね。母国で紛争とかいろいろな困難を経験して来た人とか、そういう人たちとコミュニケーションをとることは本当に難しいことだよ。そういう人たちに、初対面で心を開いてくれって言っても無理があるよね。自分のケアを振り返ることも大切だけど、割り切ることも大切!」と私を諭してくれた。

確かに、日本で「ありがとう」と言われる日常に、医療者としてなれてしまっていたかもしれないな、という自分の傲慢さにも改めて気がついた。一人一人を大切にするケア…… ここではcultural safery という概念で語られるけど、それについてもまた考えてみたい。
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by gonzalesK | 2012-05-06 10:21 | Midwifery- 助産

冷夏のシドニーより

2011年12月2日(金)


青くて高い空が、シドニーに夏の訪れを知らせている--- とさわやかに思ったのは数日前、今年は冷夏らしく、肌寒い雨の日々が続いている。クイーンズランドの洪水の影響で、ずっと高値をつけていたバナナは、やっと毎朝食べられるくらいに価格が下がった。さらに、今年はマンゴーが安くておいしい。タイのマンゴーよりも少し酸味がある感じで、胸がきゅんとなる味をしている。

先日、最後の課題を提出し、春学期が終了し、これから長い夏休みに入る。妊娠からお産とフォローしている妊婦さんがいるので、時々は病院に顔を出さなければいけないが、山のような課題から解放されたと思うとうれしい。今学期も4教科学び6単位ずつ取得した。


Midwifery Practice: Supporting Women

授業では、主にローリスクの分娩介助を勉強したり、産後のケアについて講義を受ける。演習では、日本と同じように模型を使って、お産の介助を学ぶ。日本では分娩時の会陰保護(会陰:膣と肛門の間の皮膚のこと)は、まだまだ主流だと思う。こちらでは、会陰保護のメリットが明確でないので、hands on(手を添える)でもhands off (手を添えない)でもどちらでもいいよ、という感じだ。切れるときはどんなことをしても切れてしまう、特に高齢出産や産婦の栄養状態など助産師の技術以外の要素が影響すると講師たち。これに関してはまだまだresearchが必要なようだ。

ただ、clinical expertise −こちらで何人もの助産師から「アジア人女性の会陰は、白人女性と比べて短い。だから、お産のときに、ざくっと深い傷が入りやすい。。。」と気になることを聞いた。アフガニスタン人の同級生は、妊娠中にバターを多く摂取するとお産のときに会陰がぐーんと伸びるよ、と言っていたが、民族的、民俗的なものも影響あるかもしれない。

この授業には、5週間の病院実習が含まれていた。前の学期と同じように、指定の公立病院に行って妊婦検診、お産の立ち会い、産後入院棟で産婦さんのお世話をした。シドニーでは、妊娠した女性の9割が、費用が無料である公立病院で妊婦検診を受けてお産をする。州の公立病院には、ガイドラインがあり、そのガイドラインにそってケアをすすめていく方針がある。例えば、初診のDVスクリーニング、お産のときにローリスクの妊婦には分娩監視装置をつけないで、ドップラーで間欠的に胎児心音を聴取する、などである。

こういったガイドラインは、research evidence に基づいて作られている。東京の下町の病院で働いてきた私にとっては、このガイドラインは画期的なことのように思えた。日本のフェミニスト運動の先駆的な役割を果たしてきた女医が院長だったので、妊娠期のDVスクリーニングは、都内でも先駆的に行っていたものの、まだまだ入院時の分娩監視装置は当たり前で、子宮口が全部開いてからも再び分娩監視装置をつける、という「慣習」は残っていた。ローリスクの産婦に分娩監視装置をつけて、赤ちゃんの心音を継続的に測定することは、赤ちゃんの死亡率や脳性麻痺を減少させない(むしろ不必要な帝王切開を増やすなどharm-害が懸念される)というresearch outcomes が出てから何年も経つのに、である。

州で統一してこういったガイドラインを作る(表向きの)目的は、女性の出産における満足度を高め、また不必要な帝王切開の数を軽減させるということだ。そして真の目的は、州の医療費を削減することだろう。目的はいろいろあるにせよ、公立病院というMASSのケアの提供者が、よくやっていると思う。

経験豊富なおばちゃん助産婦は、「私はお産のときにこの監視装置をつけないと不安でね、エデュケーターには内緒よ!」なんていいながら、ガイドラインにそってケアをすすめていないし、そんな場面に多々と遭遇する。しかし、何とか現場とresearch evidence のギャップを縮めようと奮闘している助産師も多くいるのだ。それは、normal vaginal delivery −なるべく医療介入をしないお産−を促進することだから、女性の身体にとってもメリットが多くある。

シドニーには、数えるほどの公立病院しかないからこれが可能だけれど、東京に星の数ほどある病院が、こういった統一されたガイドラインを作ることは、不可能に近いだろうなと思ってしまうのであった。

あとの3教科、、、つづく
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by gonzalesK | 2011-12-08 19:44 | Midwifery- 助産

西洋コンプレックスからの脱却 

2011年9月23日

(前ページからのつづき)

確かに、オーストラリアでは、研究と実践が結びついているという見方もあると思う。ヘルスプロモーションの分野などでは、特にそうかもしれない。

しかし、看護や助産の分野では、研究の知が実践に生かされているのか、と疑問に感じることもある。大学の先生もアカデミックとしての学問と、現場での実践のギャップがあることを承知であり、「実習中にどんなことで、矛盾を感じたか?」と生徒に議論させている。

会計士の同級生は、「会計学と、現場での実践にギャップがあるって感じたことはなかったなあ。」と言っていた。二人で話をしていて、助産の現場で感じるギャップは、やはり人間を相手にしているのだから、variable な要因がたくさんあって、数字を扱って1と1を足したら2になる、というわけにはいかないのかもね、ということになった。

日本にいたときは、Cochrane library やPub Med を始めとして、英語で文献を検索して記事を読み、それがresearch evidence なんだと洗脳されていたような気がする。そうしているうちに、英語圏の看護や助産は、最先端なんだと感じ、日本での看護や助産にコンプレックスを抱いてしまうのだ。今でも、日本の看護師や助産師で、そう感じている人は少なくないのではないかと思う。

しかし、それは勘違いだったな、ということを最近ひしひしと感じている。英語圏の社会でも、研究と現場での実践のギャップは、今後の大きな課題だし、それは何ら日本の助産界の課題と変わらないと思っている。もしも、留学して看護や助産を勉強する機会があれば、実際にそこの現場に出て、汗を流してみるといいと思う。現場に出ないで勉強だけしていたら、理想の看護論や助産論だけ抱えて、日本に帰ることになる。

西洋コンプレックスから脱却するには、逆説的だけど、やはり英語を勉強して、相手を知ることが必要なのかもしれない。英国でも豪州でも米国でも、研究論文では、「何だかすごい」ことを言っていても、本当のところ現場ではどうなっているのだろう、現場でのケアはたいしたことはないじゃないか、これなら日本のケアの方が、全然いいじゃないか、と思える英語力が必要なのだ。そんな視点から、改めて日本のケアについて、世界に発信してみようと思ったときに、コンプレックスからさよならできるのかもしれない。


追記:写真はMed scape Nursing から引用
http://www.medscape.com/features/nurse-caps?src=stmkt13


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by gonzalesK | 2011-09-23 17:08 | Midwifery- 助産

サンプル

2011年9月23日(金)

春の陽気のシドニー、ピンクや紫の花が町を彩り、通りを行き交う人々がくしゃみをする季節。そんな中、国連のある地域事務所で働く友人が、シドニーで開催される学術大会に出席するというので、数日うちに滞在していった。

レストランでご飯を食べながら、学会どうだったのと聞いたら、彼女は、学会はとても良かった、と言っていた。彼女はロンドンの大学院で勉強をしたけど、オーストラリアもリサーチに関してはレベルが高いというのは聞いていて、今回それを実感できたと言っていた。特に、ヘルスプロモーションの分野においては、世界でもトップレベルだから、とても勉強になったよと興奮気味に話をしてくれた。日本だと、プロジェクトの活動報告で終わってしまうところが、きちんとした方法論もあって、こちらでは実践と研究が結びついていると言っていた。

彼女の言うことは、もっともだなと思った。オーストラリアでは政府が、イギリス政府にお金を払って、ここに住む人が自由にresearch evience の集大成と言われるコクランライブラリー(Cochrane library) にアクセスできるようになっている。

Evidence-based midwifery の授業のときに、先生が、「reserach evidence に対して意識が高い妊婦さんは、妊婦外来に、例えば“コクランライブラリーで、継続ケアが良いと読んだけど、ここで継続ケアを受けることができるのか?”って、フォレストプロットの表を持ってやって来る。だから、助産師がresearch evidence に対して意識を高めて、アップデートしておかないと恥ずかしいよ。」と言っていた。それを聞いたときには、そんな妊婦さん、正直やりづらいなと思った。もちろん、いろいろなことに全く無頓着な妊婦さんが、ほとんどなのだけれど。

大学からは、学部生でもほとんどすべてと言ってよいほどの journalのデータベースに無料でアクセスできるようになっている。日本の大学院にいたときは、多くのjournal のデータベースにアクセスできなくて、他の大学へ複写依頼などを出していた。今もそうだとしたら、日本の学生さんたちは大変である。

私たちの大学の先生は、「1年生を対象に、フォーカスグループをしたいから、時間がある人は参加してね。研究費が降りたから、学年の drop-out rate を減少させるためのプロジェクトを開始したいのよ。」と意気込んでいた。私たちの大学の助産学部は、実習の厳しさ(24 hours oncall 7 days a week: 24時間週7日間体制のオンコール)から、脱落率が高いと有名らしい。この間、実習病院であった3年生は、「私たちの学年は、55人で初めて、残っているのは15人だよ。」と言っていた。私たちも、最近あの人見ないね、、なんて会話をすることがある。

そんな理由で、大学側も高い脱落率を何とかしようと、プロジェクトを開始したらしいが、もちろんそれは研究対象で、私たちはサンプルである。


つづく
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by gonzalesK | 2011-09-23 15:57 | Midwifery- 助産

Midwifery - The art of doing 'nothing' well

2011年7月23日(土)


大学は、7月初めに秋学期が終了した。1学年の生徒は60名。看護学部の生徒は500人なので、助産学部の生徒は、手厚く教育を受けられるのよ〜と先生は言っていた。生徒の半数以上は、いったん社会を経験してきた人たちで、理学療法、心理学、英文学、芸術、看護、Health Sience 、会計学などをすでに Bachelor としてもっているので助産はsecond degree なんだ、という人も結構いる。自分がお産をして、自分も助産師になりたいと思ったというママたちも多い。オーストラリアの高等教育機関には、年齢を問わず学びたい人はいつでも学び直せる、そんな土壌があるかもしれない。

今学期は、6単位ずつ4教科修得した。

Health Assessment for Midwifery practice

学部で生徒はナースではないので、バイタルサインの取り方やコミュニケーションなど基本的なことを学ぶ。これに病院実習が含まれていて、妊婦検診外来、分娩棟、産後入院棟を回る。公立病院にはエディケーターという教育だけを担当する係のmidwives がいて、指導などしてくれる。また男性のmidwife も数人いる。ナースと同じで、ゲイの人が多いようだ。

3年間で30人の女性を妊娠、出産から産後まで関わっていく(follow through experience ) のがMidwifery boardからの要請なので、早速妊婦さんを受け持っている。7月はテストの後は、冬休みだったが、学生は結構病院に出向いて、妊婦さんの検診につきそったり、お産があれば立ち会ったりしている。

実習病院である公立病院は、助産師主体でことが運ばれていく。問題がなければ、外来、出産も医師は介入しないようだ。公立病院での検診、出産、産後の助産師による家庭訪問も無料だ。私立の病院は、妊婦さんがお金を払って、ドクターを選んでみてもらったりするそうだ。


Foundation of Midwifery

講義、グル−プワーク中心で、妊娠、出産、産後の女性の心身の変化や、そのケアについて学ぶ。ケアについては、オーストラリア、イギリスのガイドラインなどを参考にしているようだ。


Midwifery knowledge and Practice

主に助産に関わる理論の導入を学ぶ。Women's centred care, cultural safety, evidence-based midwifery, Introduction for midwifery research などを講義中心で学んだ。「Who can be a mother ? 」という議題で議論したり、いろいろな背景の人がいるだけ、価値観がみんな違うんだなと思った。1年生のはじめから、助産ケアのRCTの論文を読んでいく。リサーチエビデンスを臨床に
取り入れようという先生の熱意、限られた予算や人材で、効率的に合理的にケアをしていこうという基盤があるかもしれないと思った。


Anatomy and Physiology in Childbearing

ミトコンドリアから、妊娠出産のメカニズムまで、解剖生理を学ぶ。数人の先生が担当してくれて、みんな助産師さん。助産は、Second degree としても人気があるようで、理学療法士でもある助産師さんが、骨格や骨盤底筋について教えてくれたりした。解剖生理と助産をなんとか関連付けようと、いろいろと先生が工夫してくれているのが伝わってきた。


学部のコーディネーターの先生は、オーストラリアに移住した英国の助産師さんだ。オーストラリアでの助産学部の試みは、まだ始まって5年くらいだ。このコースを修了すれば、Registered Nurse の資格がなくても、Registered Midwife として登録できる。このナースにならないで助産師になるというのが、当初豪州の看護師助産師協会から受け入れられなくて、論争があったらしい。豪州に移住した英国の助産師さんたちは、「看護協会が認めなくても、豪州の女性は助産師を必要としていて、豪州の助産師不足は深刻ではないか!」と奮闘し、助産学部の設立に貢献をしたそうだ。

豪州も日本と同じように、慢性的な助産師不足である。


追記;
写真は、助産師のバイブルとも言われているMyles の助産テキストブック2版(1956年出版)。私が持っているのは、すでに15版。古本屋で偶然購入したという友人からのギフト、と先生は興奮を交えて語った。



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by gonzalesK | 2011-07-24 00:17 | Midwifery- 助産

シドニーの青い空と広い海のふもとで繰り広げられる日常をこんぶ風味でお伝えします
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