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続こんぶの日記 KOMBU's diary from Sydney

チェロを弾く人

2010年5月18日(火)

パリの下町、モンマルトルは、小高い丘のてっぺんにあるサクレ・クール寺院を中心に広っている。遠くから見たモンマルトルは、どことなくヨルダンのアンマンに広がる街の風景のような、パレスチナ、エルサレムのオリーブの丘のような、乾いた大陸を感じさせる懐かしさがあった。

寺院の近くのテルトル広場では、画家たちが自分の絵を売っている。売り子に徹している画家もいれば、絵を売りながら描くことに専念している画家たちもいる。絵の具を重ね合わせたパレットも美しく、画家の走らせる筆の動きに見入ってしまう。私も子どものころは、写生大会で神社やお寺を描いて、時々賞をもらったりしたなあ、なんてことをずうずうしく思い出す。

ピアニストのフジ子・ヘミングさんは、著書の中でパリの大道芸人たちは、「芸と自分の人生を売っている」と言っていた。もちろん、芸術家たちが集うモンマルトルも例外ではないようだった。

広場の向こうから、突然美しいチェロの音色が聞こえたので、その方向に歩いてみた。そうすると、紫の藤の花の下で、ひとりのチェロリストが、Ave Maria を全身で弾いていた。その人の音楽に聴き入っていると、ヘルメットをかぶり作業着に身を包んだ黒人の工事現場で働くおにいさんが、向こうの方から歩いて来て、チェロリストの前に立ち止まり、音楽に聴き入っていた。一瞬の時を共有する2人の男たち。その光景が、何とも美しいと思った。

しばらくすると、おにいさんは仕事があることを思い出したかのように、去って行った。チェロが奏でるAve Maria の音色は、今でもしっかりと、私の目頭と耳に残っている。Ave Maria の祈りが、本当に神様に届きそうな、そんな音色だったなと今も改めて思う。




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by gonzalesK | 2010-06-01 23:55 | Holidays

シドニーの青い空と広い海のふもとで繰り広げられる日常をこんぶ風味でお伝えします
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