人気ブログランキング | 話題のタグを見る

続こんぶの日記 KOMBU's diary from Sydney

こだわりのある人 微生物学編

2012年12月9日(金)

11月の中旬に主にエッセイなど助産学系科目の課題を提出、薬理・微生物学入門のテストがおわって、夏休みに入った。「Time is up, pens down」という試験官のかけ声とともに試験がおわり、私は嬉しくてアフリカ人の同級生とジャンプした。ジャンプは、世界共通喜びの表現である。

微生物学の先生は、キューリ夫人を21世紀に生きるオーストラリア人にしたような感じの先生だった。学期の初めに先生が教壇に立ったときは、その迫力に生徒たちは、やや引き気味だった。

しかし、授業を重ねるごとに、先生の微生物への愛が生徒たちにも伝わってきた。クラスは主に講義だったけれども、講義から、生徒も含めたディスカッションに発展していくことが多々あった。こだわりのある人々が魅力的であるように、その人の情熱は、周囲の人々に拡散するものだと思った。

先生は、bacteria is amazing −バクテリアってすごいのよ−とよく言っていた。「あなたが飼っている犬をとても愛していて、その犬と子どもを作りたいと思ってもできないでしょーでもバクテリアはそれができるの。抗生剤のコースを処方どおりに飲みきらないと、身体のなかにまだバクテリアが残ってね、それが違う種類のバクテリアと交わって、新しいバクテリアを作りだすの、それが抗生物質の耐性菌となる場合があってね−。」という口調で授業をすすめていく。

Virus (ウイルス)は、生きてないから殺せない、だからウイルス性の病気の治療は難しい、ウイルスが原因のかぜに抗生剤を飲んでも意味がないということが分かるでしょーと。専門家の人は、なんと大ざっぱな話をして、という指摘をするかもしれないが、これは入門学。助産師になる学生が、消毒や滅菌の重要性、感染症や予防接種の基本的な知識を得ることが目的なのだ。なので、これくらい噛み砕いて話してもらって、やっと今まで漠然としていたことが、クリアになったような気がした。

特に、抗生物質の耐性菌は大きな問題となっている。MRSAの最後の砦と言われていたバンコマイシンも効かない、あらゆる抗生物質が効かないsuper bugs の存在が途上国、先進国問わず報告されているそうだ。第2次世界大戦で多くの負傷した兵士を救ったペニシリンを発見したフレミングは、耐性菌の存在を発見当初から警告していた。

大手の製薬会社は、新世代の抗生物質を開発したところで、すぐに耐性菌が出て来て「売れなくなる」ために、抗生物質の新薬の開発には消極的なのだそうだ。そんなものよりも、バイアグラなんかを売っていた方が、本社のあるシカゴに巨大ビルが建つほどもうかるのだとか。

予防接種については、超予防接種推進派の先生と、アンチ予防接種派の一部学生たちの熱い議論が、しばしば炸裂していた。南アジア出身の学生が、「先進国には、子どもに予防接種を受けさせないという選択肢もあるけれど、貧しくて医者にもかかれないようなコミュニティに住む母親たちに、その選択肢はないと思う。ひとり子どもが感染症にかかったら、あっという間に他の子どもたちにも感染して、死んでいくから。」という発言して、クラスは静まりかえってしまった。

小さい肉眼では見えないウイルスやバクテリアたちーしかし私たち人間にとって、昔も今もその存在はすごく大きい。



こだわりのある人 微生物学編_b0175015_0195183.jpg




by gonzalesK | 2012-12-09 00:23 | Midwifery- 助産

シドニーの青い空と広い海のふもとで繰り広げられる日常をこんぶ風味でお伝えします
by gonzalesK
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

最新の記事

The Year of Ro..
at 2017-02-09 21:21
HIROMI THE TRI..
at 2016-06-16 12:22
花冷え
at 2016-06-01 15:11
あっちの桜、こっちのジャカランタ
at 2016-05-18 21:22
Language of dr..
at 2016-03-15 21:06

記事ランキング

画像一覧